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【賃貸の民法改正2】原状回復義務と家賃の減額について【オーナー様向け】
- お役立ち情報
- 2020.03.24
現状回復のルールが分かりやすくなりました
今回は、民法改正により明確化された
「現状回復」と「家賃の減額」について確認していきます。
前回の敷金についてはこちら
原状回復義務について。
原状回復に関わる改正民法
第621条
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃借物が終了したときは、その損傷を現状に復する義務を負う。
ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
新法には上記のように定められています。
通常の使用及び収益によって生じた
賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く
と明記されたことにより、
経年劣化や通常損耗については、賃貸人であるオーナー負担であり、原則入居者に請求することができないとされました。
通常損耗のガイドラインはこちらを参照ください
→賃貸借契約に関するルールの見直し(事例3)
特約で原状回復を入居者負担にできる?
以前までのように賃貸契約書に原状回復特約として、通常使用による損耗・自然消耗の原状回復義務を入居者が負うものと明記し、入居者に合意を得ることで、費用を入居者負担にすることも可能かもしれません。
しかし、原則として通常使用による損耗や経年劣化の原状回復費は賃貸人の負担とされているため、入居者が特約に承諾していることが十分に証明できなければ、裁判では難しい場合が増えるのではと考えられています。
また判例より、現状回復特約によって入居者に負担させ敷金から差し引く金額は、多くて家賃の2~3ヵ月分までが妥当だと言われています。
それ以上を敷金返還額から控除することは消費者契約法に基づき、特約内容自体が無効であると判断されたケースもありました。
一部損失等による、家賃の減額について
現在新型ウイルスの影響で,設備などの入れ替えなど準備が滞っている場合があると思います。
そのせいで、エアコンなど一部使えない状態の場合、家賃の減額が定められていますよね。
それについても、一部改正されました。
第611条1
賃借物の一部が減失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて減額される。
とあります。
旧法では、
(賃借物の一部が賃借人の過失によらないで減失したときは、賃借人はその減失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。)
となっていました。
家賃の減額について新法では、
【賃借物の減失】だけではなく、
【使用及び収益することができない】場合も含め、減額の対象だと定義されています。
また、減額請求できない場合は、
【賃借人の過失】から、
【賃借人の責めに帰する】
=入居者に何らかの原因がある場合
と変更されています。
旧法では、【減額を請求できる】だったのに対し、新法では【減額される】と変更されました。入居者からの請求がなくとも、当然減額されるべきもの、なっています。
賃借物の一部減失による契約解除について
第611条2
賃借物の一部が減失その他の事由により
使用及び収益をする事ができなくなった場合において、
残存する部分のみでは賃借人が
賃借をした目的を達することができないときは、
賃借人は契約の解除をすることができる。
家賃減額の定義に対し、契約解除については、賃借の目的を達することができない時は、賃借人の責めに帰する場合であっても、契約の解除をすることができると変更されました。
旧法では、
(前項の場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。)
となっていました。
【賃借人の過失によらないで減失した場合において、賃借の目的を達せないとき】
とされていましたが、新法では、【賃借物の減失・その他の事由により賃借の目的を達せないとき】と変更されているのです。
少しでも皆様のお役に立てるように
前回の「敷金の定義」に引き続き、民法改正によって変更される、
「原状回復義務」と「家賃の減額・契約解除」
について、確認してまいりました。
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【参考】
・民法の一部を改正する法律案新旧対照条文 / 法務省